
監修者
株式会社篤月
陳 逸翔広告代理店を退職後、早稲田大学大学院入学&卒業。
累計100社以上の日本企業の中国SNSコンサルティング経験を持つ。
自身も5万以上のフォロワーを中国SNSでもつ、第一線のKOLである。
日中関係悪化、今何が起こっている?

現在、日中関係は複雑な局面を迎えています。
2025年11月に台湾有事に関する日本の首相発言を機に、両国関係が緊張状態に入りました。
それに伴って、中国政府は日本への渡航自粛を呼びかけており、航空便の減便や交流行事の中止が相次いでいます。
歴史的に見ると、日中関係は尖閣諸島問題や歴史認識問題など、さまざまな火種を抱えてきました。
現在は深刻な相互不信に苛まれており、古い問題が新たな問題に覆い隠されても、何らかの拍子に再び対立が再燃する構造がある状況です。
2012年の尖閣諸島国有化以降、中国は海警局の公船を周辺海域にほぼ毎日派遣し続けており、軍事的緊張も高まっています。
日中共同世論調査でも、中国側の対日イメージが急速に悪化していることが明らかになっています。
参考記事:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/index.html
日中関係の変化によって、既存ビジネスへの影響はあるのか

日中関係の変化は、日本企業の既存ビジネスに影響を及ぼしているとされています。JETROの調査によると、2024年の日本の対中輸出は3年連続で減少しました。
特に、自動車分野では、中国市場における日系ブランドのシェアが4年間で約半減し、11.2%まで低下しています。
企業が今後3年で最も重視する輸出先では、米国が中国を初めて上回って首位となり、中国で既存ビジネスの拡充や新規ビジネスを検討する企業は全体の3分の1で過去最低となりました。
また、2024年度の調査では、営業利益を黒字と見込む企業は58.4%で、前年比1.9ポイント低下し、競合企業が増加したと回答した割合は6割超、市場シェアが縮小したとした割合は4割超に達しています。
これらの数字は、日中関係の変化が日系企業の投資判断や事業展開に直接的な影響を与えていることを示していると言えます。
参考記事:https://www.jetro.go.jp/biznewstop/asia/cn/biznews/
現在の日中関係におけるビジネスリスク

現在の日中関係におけるビジネスリスクは、従来の市場リスクに加え、非市場リスクが顕著に高まっています。
1つ目はコンプライアンスリスクです。
中国当局は「反スパイ法」や「データセキュリティ法」などの法執行を厳格化しており、日系企業は知らないうちに法律に抵触するリスクが増大しています。
特に、データの越境移転に関する規制が非常に厳しく、日本本社との情報共有やグループ内でのデータ活用に大きな制約を課しています。
2つ目はレピュテーションリスク(評判リスク)です。
ナショナリズムの高まりや、SNSでの情報拡散により、企業の対応が瞬時に不買運動や炎上につながる可能性が高くなっています。
日本企業には、現地の歴史認識や社会感情に配慮した慎重な広報戦略が求められます。
3つ目は予見不可能性のリスクです。
中国におけるリスクは「いつ、何が起こるかわからない不確実性の低さ」が最大のリスクと指摘されており、政策の急な変更や行政処分のリスク、さらには取引先の信用状況の急変など、従来の市場調査やリスク分析では捉えにくい要因が増えています。
日中関係の未来を考えた今後の動き方

日中関係の未来を考えた日系企業の今後の動き方は、「リスク低減」と「市場の再定義」の2つの軸で考える必要があるでしょう。
まず、リスク低減の徹底です。
サプライチェーンの「脱中国」を急進的に進めるのではなく、「中国市場向け生産」と「第三国・グローバル市場向け生産」を明確に分け、リスクを分散させる必要があります。
また、中国国内のコンプライアンス体制を強化し、「反スパイ法」や「データ法」への対応を最優先事項として動くべきです。
現地のビジネスリスクに関する注意喚起を常に参照し、現地法務体制を強化しましょう。
次に、中国市場の再定義です。
中国を「世界の工場」として見る時代は終わるとされており、「巨大で成熟した消費市場」として再認識しなければならないと言えます。
急速に進化する中国のデジタル技術や新たな消費トレンドに対応するため、現地企業とのオープンイノベーションや、現地の顧客ニーズに合わせた製品開発・販売体制を強化することが求められます。
さらに、中国外の成長市場であるASEANやインドなどへの展開を加速させ、経営資源を戦略的に分散投資する姿勢が、日系企業が不安定な日中関係下で持続的な成長を実現するための鍵となります。
まとめ

今回は、日本の首相の台湾有事に関する発言を受けて、悪化が浮き彫りになったとされている日中関係について解説しました。
現在の日中関係は、尖閣諸島や台湾を巡る安全保障上の対立を背景に、政治的な緊張がビジネスの予見可能性を低下させている状況です。
この関係悪化は、既存ビジネスに深刻な影響を与えており、サプライチェーンの再編、中国国内の過剰生産能力による競争激化と収益性低下を引き起こしています。
日系企業が直面するリスクとしては、「反スパイ法」の厳格化などに伴うコンプライアンスリスクや、ナショナリズムに起因するレピュテーションリスクといった非市場リスクが挙げられます。
今後は、「リスク低減」として生産拠点の分散と法令遵守の徹底を図りつつ、中国市場を「巨大な消費市場」として再定義し、現地ニーズに特化した製品開発と新市場への展開を加速させることが、日系企業が不安定な日中関係下での持続的成長に繋がる不可欠な戦略となります。


