
監修者
株式会社篤月
陳 逸翔広告代理店を退職後、早稲田大学大学院入学&卒業。
累計100社以上の日本企業の中国SNSコンサルティング経験を持つ。
自身も5万以上のフォロワーを中国SNSでもつ、第一線のKOLである。
モノ消費からコト消費へ:中国人観光客の消費行動における劇的変化

かつての中国人観光客の消費行動は、爆買いに象徴されるようにモノ消費が中心でした。
特に、高級ブランド品や電化製品、化粧品、医薬品などを大量に購入し、帰国後に転売するなどの行動も見られることが特徴でした。
しかし、近年はこの傾向が劇的に変化しており、現在の中国人観光客の興味はコト消費へと移行しています。
コト消費とは、体験や思い出を重視する消費スタイルのことで、具体的には、日本の文化体験として茶道、着物、アニメ関連施設訪問や、ミシュラン店、地域特有の食などで美食体験をすること、温泉や宿泊施設での上質なサービス体験などが含まれます。
消費行動の変化の背景には、中国国内の生活レベルの向上と、旅行経験の増加によるよりパーソナルで、質の高い旅への欲求の高まりが見られます。
日本企業は単に商品を売るだけでなく、付加価値の高い体験を提供し、その体験をSNSで発信してもらうための環境整備が求められます。
参考記事:https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001884192.pdf
旅マエの情報収集:RED(小紅書)とDouyinが日本での購買を決める

訪日旅行をする中国人観光客は、旅行前にどんな情報収集をするかで旅行での買い物を決めています。
訪日前に役立った情報源とされているプラットフォームのトップはSNSです。
中国調査会社の調査では、中国人が旅行計画を立てる際に使うプラットフォームの1位が小紅書(RED)、2位が中国版TikTok抖音(Douyin)という結果が出ています。
REDは中国版Instagramとも呼ばれ、中国最大級のSNSであり、特に若い世代の女性ユーザーや海外に関心が高いユーザーが多く利用しています。
海外旅行を計画する中国人は出発の50〜60日前から準備を始めることが多く、その際に小紅書(RED)の投稿を徹底的にリサーチする傾向があります。
中でも、日本限定・地域限定・季節限定といったキーワードに敏感な消費者が増加しており、ビジュアル重視のコンテンツとリアルな口コミが購買意思決定に直結しています。
中国版TikTokと呼ばれているDouyinはショート動画で「体験の瞬間」を伝えるプラットフォームとして機能し、エンターテインメント性の高い投稿が一気に拡散される特性を持っています。
訪日観光施設や店舗がこれらのプラットフォームで効果的な情報発信を行うことは、今や中国人観光客向けに必須のマーケティング戦略となっています。
参考記事:https://togetsu.co.jp/column/_ja-_YMU
決済手段の整備は必須:Alipay・WeChat Pay導入による消費促進効果

中国人観光客の消費行動を最大化するために、決済手段の整備は必須事項です。
中国では、決済方法としてモバイル決済が圧倒的な主流となっており、現金やクレジットカードの利用は限定的です。
訪日客も同様で、Alipay(支付宝)とWeChat Pay(微信支付)が主要な決済手段となっています。
これらのモバイル決済手段を店舗に導入することの意義は、単なる利便性の提供に留まりません。
中国人観光客にとって、慣れ親しんだ決済方法が使えないことは買い物体験の障害となり、購買意欲を大きく削ぐ原因となってしまいます。
反対に、スムーズにモバイル決済を利用できる環境を整備することは、安心感を与え、結果として客単価の向上や店舗への再訪を促す消費促進効果を生み出します。
さらに、AlipayやWeChat Payは、クーポン配布や割引キャンペーンなどのマーケティング機能とも連携しており、これらを活用することで集客効果を高めることも可能です。
Z世代と富裕層の違い:ターゲット別に見る訪日旅行の消費トレンド

訪日中国人観光客の中でも、世代や経済状況によって消費行動は大きく異なります。
1995〜2009年生まれの「Z世代」の人口は、2019年時点で約2億6,000万人を超えました。
インターネットやSNSなどのIT環境に囲まれて成長したZ世代の彼らは、前の世代とは大きく異なる価値観や消費観を持っています。
Z世代は自身の個性や趣味を大切にし、自己満足を得るための消費を惜しまない傾向が強く、「悦己」(自身を悦ばせること)を優先します。
Z世代はアニメやマンガなどのIPコンテンツに強い関心を持っており、限定グッズやコラボ商品、体験型イベントに積極的です。
また、SNSで「映える」体験やユニークな文化体験を重視し、個人旅行での自由な行動を好む傾向があります。
その一方、富裕層は高級ブランド品への購買意欲が依然として高く、体験型消費に適したデパートはコロナ禍からの回復が早く、コロナ禍以前の水準を超えるケースも出ています。
富裕層は高品質なグルメ、プライベートツアー、ラグジュアリーホテル滞在など、プレミアムな価値提供を求めます。
まとめ:中国人観光客の心を掴み消費を最大化する重要ポイント

今回は、中国人観光客の消費行動の特徴と世代別の戦略について解説しました。
中国観光客の消費行動は、モノ消費からコト消費へと変化しており、日本独自の文化体験や上質なサービスへの需要が高まっています。
この変化を踏まえて、日系企業は付加価値の高い体験を提供することが求められます。
次に、旅マエの情報収集を支配するREDやDouyinといった中国独自プラットフォームへ積極的にコンテンツを制作し、リアルな口コミと視覚的魅力で購買意欲を高める施策が必要です。
また、買い物体験の安心感と利便性を確保するため、中国人がよく使うAlipay・WeChat Payのモバイル決済手段を導入し、消費の機会損失を防ぎましょう。
最後に、Z世代のニッチな体験と高い情報発信力、富裕層の排他的で上質なサービス志向といったターゲット別の消費トレンドを見極め、それぞれのニーズに合わせたカスタマイズされたアプローチを展開することが、中国人観光客の心を掴み、消費を最大化する成功戦略となります。


