

会社名
株式会社篤月
事業概要
中国SNSマーケティング支援。小紅書(RED)、抖音(Douyin/中国版TikTok)などのSNS運用代行、広告配信、中国人インフルエンサーキャスティング、インバウンド集客支援を展開。
URL
担当者
陳逸翔 代表
相談背景
今回は、クライアント企業の事例ではなく、株式会社篤月の代表である陳逸翔自身の中国SNSアカウント運用についての事例です。
自社アカウントというと、どうしても「会社の宣伝をするためのアカウント」と思われがちですが、実際にはその時々の会社フェーズや代表自身の役割によって、発信内容も目的もかなり変わってきました。
一番最初は、いわゆるVlog型の発信からスタートしました。
当時はまだ今ほど経営に時間を取られておらず、撮影や編集にかなり時間を使うことができていました。発信内容としては、「早大生の一日」や「早大生起業家の一日」のような、自分にしか撮れない素材を使ったVlogが中心です。
この時期は、かなりクリエイター寄りの動き方をしていました。自分で素材を撮り、自分で構成を考え、自分の言葉でアフレコを入れる。学生起業家としての日常、移動、打ち合わせ、仕事、食事、社内の雰囲気などを、かなり細かく撮影していました。今振り返ると、時間を贅沢に使ってコンテンツを作れていた時期だったと思います。

その分、数字もかなり出ていました。1投稿で数百いいねが連続して出ることもあり、当時はかなり“クリエイター”としての感覚に振り切っていたと思います。中国SNSでは、単なる会社紹介よりも、人の生活やリアルな日常の方が見られやすいです。特に「日本で起業している若い中国人」「早稲田出身の起業家」という文脈は、中国人ユーザーにとっても分かりやすく、興味を持たれやすいテーマでした。

ただ、会社が成長していくにつれて、だんだんその運用が難しくなっていきました。経営者としてやるべきことが増え、撮影や編集に割ける時間が減っていく。以前のように、1本のVlogに何時間も使い、自分で細かくアフレコを入れて編集することが現実的ではなくなっていきました。
そこで、発信の方向性を少しずつ変えていきました。
Vlog中心だったアカウントから、会社の日常、新入社員、社員との食事、社内の空気感、会社の成長の様子などを見せるアカウントへ変わっていきました。これによって、自分一人で全部編集しなければいけない状態や、自分にしか作れないコンテンツに依存する状態からは少しずつ抜け出せました。
ただ、その一方で新しい課題も出てきました。
会社の日常や社員の雰囲気を出すコンテンツは、採用にはつながります。実際、「この会社楽しそう」「こんな会社で働きたい」と思ってもらうことには一定の効果がありました。ですが、仕事の問い合わせにはなかなかつながらない。採用広報としては機能しても、BtoBの新規商談を生むアカウントにはなりきっていなかったのです。

そして2026年、5期目に入る直前あたりから、さらに大きく方針を変えました。
現在は、採用系の発信はほぼ止めています。「うちの会社はこんなに楽しいです」「社員とこんな食事をしています」という投稿も基本的にはストップしました。採用を積極的にしていない以上、その発信を続ける意味が薄くなったからです。
その代わりに、今はかなり硬い内容を発信するようになりました。たとえば、「この会社だったら中国SNSでどうプロモーションするべきか」「この業界ならREDと抖音のどちらを使うべきか」「こういう商材ならどこに課題があるか」といった、実際の商談やコンサルティングに近い内容を、そのまま動画として配信するようにしています。
動画自体はかなり長く、編集後でも4分、5分になることがあります。中国SNSの一般的なショート動画と比べると長めですし、内容も硬いです。正直、数字だけを見るとかなり落ちました。10いいね程度の投稿もありますし、1桁いいねしか付かない投稿もあります。
ただ、その分、問い合わせ率は明らかに変わってきました。
500再生、1,000再生しか取れない動画でも、その中のオーナー様や経営者様が2名、3名問い合わせをしてくださる。これは以前のVlog型・採用型のコンテンツでは起きづらかったことです。つまり、見た目の数字は下がっているけれど、商談に近い人に届いている。今のアカウントは、数字を取りにいくアカウントではなく、問い合わせを取りにいくアカウントへ変化したと言えます。
対応概要
株式会社篤月・陳逸翔代表のアカウント運用は、大きく三つのフェーズに分かれています。
一つ目は、Vlog型アカウントのフェーズです。
この時期は、「早大生の一日」「早大生起業家の一日」のような、代表自身の生活や仕事の様子を切り取った発信が中心でした。自分で撮影し、自分で素材を集め、自分でアフレコして投稿する。いわば、代表自身が完全にクリエイターとして動いていた時期です。
このフェーズの強みは、素材の独自性です。早稲田の学生でありながら起業している、会社を作っている、中国SNSをやっている。こうした文脈は他の人には簡単に真似できません。自分にしか撮れない素材、自分にしか話せない内容を出していたからこそ、ユーザーからの反応も良く、数百いいねを連発できる時期がありました。
ただ、この運用はかなり属人的でした。
撮影も自分、編集も自分、アフレコも自分。自分が時間を使わないと成立しないため、会社が大きくなるにつれて継続が難しくなりました。経営者としての仕事が増えるほど、クリエイターとしての時間が減っていく。ここに最初の大きな壁がありました。
二つ目は、会社の日常・採用広報型のフェーズです。
Vlog型から少しずつ移行し、会社の変化、新入社員、社員との食事、社内の日常、会社として成長している様子を発信するようになりました。これは、自分一人がクリエイターとして全部背負う状態から抜け出すための変化でもありました。
このフェーズでは、アフレコを毎回自分で入れなくてもよくなり、自分にしか編集できないという課題も少しずつ解決されていきました。会社の空気感を見せることで、採用広報としての価値も出てきました。実際、「こういう会社で働きたい」「若い会社で面白そう」と思ってもらえるコンテンツにはなっていたと思います。
ただ、ここでまた別の課題が出ました。
採用にはつながるけれど、仕事の問い合わせにはつながりづらいという課題です。会社の雰囲気を見せる投稿は、求職者には刺さります。しかし、企業のオーナーや経営者が見た時に、「この会社に仕事を相談したい」と思うかというと、また別の話です。
特に株式会社篤月はBtoBの会社です。
中国SNS運用、インバウンド集客、中国人向けプロモーションを支援する会社である以上、本当に欲しいのは「この会社に相談したい」と思ってくださる経営者・担当者からの問い合わせです。会社の日常を見せるだけでは、そこまで届ききらない。そこで、2026年に入ってから発信方針を大きく変えました。
三つ目が、商談・コンサル型コンテンツのフェーズです。
5期目に入る直前あたりから、発信内容をかなり硬くしました。今は、実際の商談で話すような内容、コンサルティングの一部をそのまま動画化しています。
たとえば、
「この業界なら中国SNSでどう打つべきか」
「この会社ならREDと抖音どちらを優先すべきか」
「KOLを使うなら何人規模でやるべきか」
「インバウンド飲食店なら何を見せるべきか」
「不動産会社ならどういう発信が危ないか」
こういった内容を、かなり具体的に話すようにしました。
動画の尺も、かなり長くなっています。編集後でも4分、5分になることがあります。中国SNSでよくある短くて分かりやすい動画とは違い、内容も硬い。だから当然、いいね数は落ちます。10いいねしか付かない投稿もありますし、1桁いいねの投稿もあります。
ただ、それで良いと考えています。
なぜなら、今の目的はバズではなく問い合わせだからです。
500再生、1,000再生しか取れなくても、その中にオーナー様や経営者様がいて、2名、3名が問い合わせしてくださる。これが今のアカウントの狙いです。数字としては小さく見えるかもしれませんが、BtoBの問い合わせ獲得としては非常に効率が良いです。
現在は、採用系のコンテンツは基本的に止めています。採用を積極的にしていない以上、「うちの会社は楽しいです」「社員と仲が良いです」といった投稿を続ける必要はありません。それよりも、今はコンサルティングの一部を公開し、見込み顧客に「この人はちゃんと分かっている」「この会社に相談したい」と思ってもらうことを優先しています。

対応ポイント
① Vlog型で最初に“人としての認知”を取ったこと
最初のVlog型コンテンツは、今振り返ってもかなり重要だったと思っています。
いきなり会社のサービス説明をしても、誰も見てくれません。特に創業初期は、会社名も知られていなければ、実績も今ほどありません。だからこそ、まずは代表個人として見てもらう必要がありました。
「早大生の一日」
「早大生起業家の一日」
「若い中国人が日本で会社をやっている」
こういった切り口は、ユーザーから見ても入りやすいです。そこから人として興味を持ってもらい、少しずつ会社や事業に触れてもらう。創業初期の代表IPとしては、かなり自然な入り方だったと思います。
② クリエイター型運用の限界を感じ、会社の日常発信へ移行したこと
Vlog型は数字が出やすい一方で、かなり属人的です。
自分で撮らないといけない。
自分で編集しないといけない。
自分でアフレコしないといけない。
これは、会社が小さいうちは成立します。ただ、経営者としてやることが増えていくと、だんだん両立できなくなります。
そこで、会社の日常、新入社員、社員との食事、社内の雰囲気を発信する方向に切り替えました。これによって、自分一人で全部作る必要は少し減りましたし、採用広報としての価値も出ました。
このフェーズは、会社の成長を見せる意味ではかなり良かったと思っています。
ただし、仕事の問い合わせには直結しづらい。ここが次の課題でした。
③ 採用型から、問い合わせ獲得型へ切り替えたこと
2026年に入ってから、大きく変えたのはここです。
それまでは、会社の雰囲気や採用につながる投稿も多く出していました。ただ、採用を積極的にしていないタイミングでその発信を続けても、事業上の優先度は高くありません。
そこで、採用系の発信をやめ、商談やコンサルティングに近い内容へ切り替えました。
これはかなり大きな方針転換です。
数字は落ちます。
いいねも減ります。
一般ユーザーには面白くないかもしれません。
でも、経営者や事業責任者には刺さりやすくなります。実際、再生数が少なくても問い合わせが来るようになりました。BtoBの代表アカウントとしては、今の方が目的に合っていると思っています。
④ “数字が低い=失敗”ではないと割り切ったこと
今の投稿は、正直数字だけを見ると弱いものもあります。
10いいね。
1桁いいね。
500再生。
1,000再生。
普通のSNS運用なら、失敗に見えるかもしれません。
ただ、BtoBではそう単純ではありません。
500人に見られて、そのうち2人のオーナー様が問い合わせしてくれるなら、それは十分成功です。1万人に見られて誰も問い合わせしない投稿より、500人に見られて2件問い合わせが来る投稿の方が、事業としては価値があります。
ここはかなり大事な考え方です。
SNSの数字と事業成果は必ずしも一致しません。代表IPの場合、特にBtoBでは「誰に届いているか」の方が大事です。
⑤ コンサルの一部をそのまま出すことで、見込み顧客の信頼を作っていること
今のアカウントでやっていることは、ある意味かなりシンプルです。
普段の商談で話していること、コンサルで伝えていることの一部を、そのまま動画で出しています。
これは出し惜しみをしない発信です。
「この業界ならこうした方がいい」
「この媒体は使わなくていい」
「この施策は人数が足りない」
「この業界はREDが強い」
「この表現は危ない」
こういう話をかなり具体的に出すことで、見ている経営者や担当者が、「この人は現場を分かっている」と感じてくれる。そこから問い合わせにつながる。
今のアカウントは、クリエイターとして楽しませるためのアカウントではありません。採用広報のためのアカウントでもありません。
中国SNSに悩んでいる企業が、相談する前に代表の考え方を理解するためのアカウントになっています。



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