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日系企業が知っておくべき中国人の仕事に対する考え方とその背景

日系企業が知っておくべき中国人の仕事に対する考え方とその背景 コラム
陳 逸翔

監修者

株式会社篤月

陳 逸翔

広告代理店を退職後、早稲田大学大学院入学&卒業。
累計100社以上の日本企業の中国SNSコンサルティング経験を持つ。
自身も5万以上のフォロワーを中国SNSでもつ、第一線のKOLである。

中国人の仕事観の背景:儒教・集団主義の影響


中国人の仕事観を理解するには、2500年以上にわたって根付いてきた儒教と集団主義について理解することが重要です。

まず、儒教の思想では、「修身斉家治国平天下」という理念のもと、学問を修めて出世することを美徳としています。

そのため、中国人材は仕事において明確なキャリアパスと成長機会を重視しており、職業訓練や技能向上への意欲が高い傾向にあります。

また、儒教は君臣、父子、夫婦の関係を主従で規定しており、上下関係や序列を重視する文化が形成されています。

職場では上司への敬意を示す一方、明確な指示や評価基準を求める傾向が見られます。

続いて、中国の集団主義は、「帮」と呼ばれる密接な内集団への強い帰属意識と、「関係」という信頼に基づく人脈ネットワークを重視しています。

最初は距離を置き、信頼関係が築かれてから一気に近づくというパターンが典型的とされています。

そのため、仕事では業務外の雑談や食事を通じた個人的な関係構築が重要になります。

現代の中国人の仕事観には、伝統的な集団主義と急速な経済発展がもたらした成果主義が共存していることが特徴です。

給与や昇格への要求が強く見える場合も、自分の価値を正当に評価してほしいという集団主義における自己主張である可能性があります。

日系企業が中国人材を効果的にマネジメントするには、儒教に基づく成長志向、集団主義に基づく関係性の重視、現代的な成果主義という三つの要素を理解することが求められます。

効率重視・結果重視の働き方


現代の中国人若年労働者、特にZ世代の中国人は、伝統的な長時間労働文化に対して明確な価値観の変化を示しています。

その背景には、高学歴化と就職難という厳しい労働環境があります。

中国では2023年4月の16〜24歳の若年失業率は20.4%に達しました。

このような過酷な競争環境の中で、若年層は「いかに効率的に成果を出すか」を重視する傾向が強まっています。

これは単なる怠惰ではなく、限られた時間とリソースを最大限に活用しようとする合理的な判断と言えます。

特に、注目すべきは「996労働問題」への反発です。

朝9時から夜9時まで週6日働く労働慣行に対し、若者たちは「残業が日常的な職場は避けたい」と明言するようになり、ワークライフバランスへの意識が高まったことで、長時間労働よりも効率的に成果を出すことを評価する企業を求めています。

また、フレキシブルワークを選択する大卒学生の割合が16%を超えるなど、就業形態の多様化も進んでいます。

動画制作やライブ配信など、プラットフォーム経済を活用した柔軟な働き方が若者の新たな選択肢となっており、固定されている勤務時間や場所などにとらわれない効率的な働き方を追求する姿勢が顕著に見られます。

日系企業が中国人材を採用する際は、この「効率重視・結果重視」の価値観を理解し、明確な評価基準と成果に基づく報酬体系を導入することが重要です。

長時間労働を美徳とする日系企業の特徴的な働き方ではなく、効率的に成果を出した人材を正当に評価する仕組みが求められています。

 参考記事:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2023/4248bedf415c0760.html

上下関係・権威尊重と意思表明のバランス


中国人の職場における行動は、儒教文化に基づく序列意識と現代の実力主義が複雑に絡み合っており、一見矛盾するような特徴を持っています。

儒教では、上下関係や権威への敬意が重視されていますが、この敬意は形式的なものではなく、「その人の能力や実績、人格に対する尊重」という実質的な評価に基づいています。

現代の中国人、特に若年層の人たちは、役職よりも「能力」「実績」「信頼関係」を重視し、上下関係があってもフラットな関係性で議論する文化があります。

若手でも上司に意見することが普通であり、敬語の使用も日本ほど厳格ではなく、フランクに名前で呼び合うことも多いです。

中国人は自己主張が強く、思ったことをはっきりと口にし、上司に対しても率直に意見を述べる傾向にあります。

しかし、同時に「面子」を極めて重視し、公衆の面前で叱責されることは大きな屈辱と感じ、強い反発を招きます。

これは「対等な立場での率直な議論は歓迎するが、人前で恥をかかされることは許容できない」という価値観による考えです。

日系企業が中国人材をマネジメントする際は、形式的な上下関係よりも実力と信頼関係に基づくリーダーシップを発揮し、明確な指示と公平な評価基準を示すことが重要と言えます。

率直な意見交換を歓迎しながらも、批判する際は個別に行い、公の場では相手のメンツを守る配慮も必要でしょう。

チームより個人の成果を重視する風潮


中国人の仕事観を語る上でとても重要なのが、「個人主義」と「成果主義」の傾向です。

中国は集団主義文化を持つ国ですが、その「集団」の概念は日本とは異なります。

中国人が考える「個」は、自分一人または自分を含む内集団(家族や信頼できる仲間)を指しており、内集団の外の人間の利益はあまり考慮しない傾向があります。

反対に、日本人は組織全体を一つの集団と捉え、チーム一丸でゴールを目指すことを重視します。

この違いが、日系企業で働く中国人が「個人プレイをする」と見られてしまう原因となっているのです。

中国人は仕事に対してプロセスよりも結果を重視していることから、効率性を追求します。

日本人が最初から100点を目指すのに対し、中国人はまず60点や70点を達成し、必要があれば後から修正すればよいと考えています。

また、自分の担当業務が終われば、周囲が残業していても退勤することに抵抗を感じないため、仕事とプライベートをはっきり区別し、家族を大切にする文化が見られます。

さらに、中国人は仕事を一人で抱え込み、共有しない傾向があります。

これは面子を重んじるため、ミスが発覚することを避けたいという心理が働いているためです。

進捗を尋ねると「問題ない」と答えますが、これは「現時点では問題ないが、先のことはわからない」という意味であり、日本人の感覚とは異なる部分です。

日系企業が中国人材を効果的にマネジメントするには、個人の成果を明確に評価する制度を整えながら、チームワークの重要性を論理的に説明し、定期的な進捗確認の仕組みを設けましょう。

中国人との協働で気をつけたい価値観ギャップ


中国で社会問題となった「996」問題は、日系企業が中国人材と協働する際に理解すべき価値観の変化を象徴している出来事です。

「996」とは朝9時から夜9時まで週6日働くという勤務体制で、中国のIT企業を中心に広がりました。

この働き方は中国労働法に明確に違反しています。

中国では1日8時間、週40時間が標準労働時間とされ、残業は月36時間を超えてはならないと規定されているにもかかわらず、急速な経済成長を遂げる中で、多くの企業が「成功のためには長時間労働も厭わない」という価値観を従業員に求めてきました。

今の時代において注目すべきは、現代の中国人、特に若年層がこの価値観に強く反発している点です。

2019年にプログラマーたちが立ち上げた「996.ICU」プロジェクトは、過労でICUに運ばれる様子を風刺したもので、GitHubで20万以上のスターを獲得する大きな社会運動となりました。

中国のホワイトカラーの8割で残業が常態化しており、週20時間以上の残業が9.2%を占めている状況は、かつての日本の企業戦士文化を彷彿とさせるものです。

しかし、重要なのは中国の若者が日本と同じ道を歩むことを拒否し始めているということです。

健康を犠牲にしてまで働くことに疑問を抱き、ワークライフバランスを重視する「低欲望社会」へと移行しつつあります。

日系企業が中国人材と協働する際に気をつけるべき価値観のギャップは以下の点です。

まず、長時間労働を美徳とする日本的な働き方を押し付けないことです。「残業は当然」「休日も会社のために」という暗黙のルールにおける期待は、中国人材、特に若年層には受け入れられません。

彼らは効率的に成果を出すことを重視しており、労働時間の長さではなく結果で評価されることを求めています。

また、中国人材は法律や契約を重視しているため、日本のように「状況に応じて柔軟に」という曖昧な対応ではなく、労働時間、残業代、休日について明確な取り決めを作る必要があります。

2021年に中国政府が「996は違法」と明確に警告したことで、企業も労働環境の改善を迫られていることからも、中国人を雇う日系企業も同様の対応が必要と言えます。

日系企業は、中国人材の「効率重視・結果重視」の価値観を理解し、成果に基づく評価制度を整備しましょう。

長時間働くことではなく、限られた時間で高い成果を出すことを評価する文化を構築することで、優秀な中国人材を確保し、定着させることができるでしょう。

参考記事:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2019/3eff5416bea4b944.html

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