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中国ライブコマース市場における最新の規制と罰則事例

中国ライブコマース市場における最新の規制と罰則事例 コラム
陳 逸翔

監修者

株式会社篤月

陳 逸翔

広告代理店を退職後、早稲田大学大学院入学&卒業。
累計100社以上の日本企業の中国SNSコンサルティング経験を持つ。
自身も5万以上のフォロワーを中国SNSでもつ、第一線のKOLである。

中国ライブコマースにおける法制度の枠組み


中国では急速に成長するライブコマース市場に対して、消費者保護と産業の健全な発展を促すために、包括的な法制度の整備が進められています。

2021年4月には、国家インターネット情報弁公室、公安部、商務部など7部門が共同で「インターネットライブコマース管理弁法」を発表し、5月25日に施行しました。

この弁法は全5章30条で構成されており、ライブコマース産業における初の直接的な法規制となっています。

対象となるのは、ビデオライブ、オーディオライブ、グラフィックライブ放送を通じたインターネットサイト、アプリケーション、ミニプログラムによるマーケティング商業活動です。

弁法が制定された背景には、ライブコマース市場の急拡大に伴うさまざまな問題が関係しています。

国家インターネット情報弁公室の担当者は、ライブコマースが就業促進や内需拡大に積極的な効果を発揮した一方で、販売者の言語や行動が模範的でなく、未成年者を利用した利益獲得やプラットフォーム企業の主体責任が不十分といった問題が顕在化していたと説明しました。

具体的な規制としては、プラットフォーム企業には健全なアカウント登録や情報の安全管理、営業行為の規範化、未成年者保護、消費者の権益保護、個人情報の保護、インターネットとデータの安全管理スキームの構築が求められます。

また、閲覧数やいいね数の虚構や改ざんは明確に禁止されることとなり、法規制に違反した場合は、マーケティング担当者などのブラックリスト登録が義務付けられました。

この規制に対応していないプラットフォームに対しては、プラットフォーム名の公表などの処罰が科されることとなり、ライブコマース市場全体の透明性と信頼性の向上が図られています。

中国のライブコマース市場は急成長を遂げていることから、今後も法制度の整備により、持続可能な発展基盤の構築が必要となるでしょう。

参考記事:https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/04/216ef9d3445b8bf6.html?utm_source=chatgpt.com

禁止商品・表現規制の具体例


中国ライブコマースでは、消費者保護と公正な競争を目的として、禁止商品と表現規制が厳格に定められています。

違反があった場合、多額の罰金や営業許可の取り消しなど重い処罰が科されるため、事業者は細心の注意を図りましょう。

「インターネットライブコマース管理弁法」第7条では、プラットフォーム企業に対し、インターネット取引が禁止されている商品を示すネガティブリストの作成を義務付けています。

具体的には、違法薬物や偽造品、海賊版、個人情報などが該当します。

越境ECの場合は、関連商品が原産地の基準を満たしていても中国の基準を満たしていない場合は消費者の自己責任となることや中国語ラベルがない可能性があること、個人使用のみで転売できないことを明示しなければなりません。

そして、表現規制で最も重要なのは「絶対的表現」の使用禁止です。

「国家級」「最高級」「最佳」などの最上級表現は、客観的な判断基準が欠けていることから、消費者の誤解を招く恐れがあるため、原則禁止されています。

また、「最新技術」「中国第一」「全網一」「販売一」「ランキング1位」といった表現も禁止されています。

さらに、商品カテゴリーごとにも詳細な規制が存在します。

酒類については、飲酒に緊張や焦りの解消、体力増進などの効果があると明示または暗示することが禁止されています。

保健食品については、虚偽の効果効能をうたうことが厳しく取り締まられています。

ステルスマーケティングも規制対象です。

2023年5月に施行された「インターネット広告管理弁法」では、商品やサービスを販売し、購入サイトのリンクなどを購入方法として付加する場合、目立つ位置に「広告」と明示しなければならないと定められています。

違反した場合の罰則は厳しく、工商行政管理部門が広告掲載の停止を命じ、広告主に対して20万元以上100万元以下の過料を科します。

情状が深刻な場合は、営業許可証の取り消しや、1年以内の広告審査申請の受理拒否といった処分が下されます。

中国でライブコマースを展開する際は、ライブ配信前に専門家による表現チェックを受け、法的リスクを回避することが不可欠です。

参考記事:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2024/1101/76883ddf2c227526.html

インフルエンサー・配信者の登録義務と認可制度


中国ではライブコマース市場の急拡大に伴い、インフルエンサーや配信者に対する厳格な登録義務と認可制度が導入されました。

これらの規制は、ライブコマース市場の健全化と消費者保護を目的としており、違反した配信者には厳しい処罰が科されます。

2022年6月に中国の文化観光部と国家広播電視総局が発表した新しい規制では、ライブ配信中の行動について31項目の禁止事項が設けられました。

特に重要とされているのが、法律・金融・医学・教育などの専門的なトピックについて語る場合に、ライブ配信者に対して該当分野の専門資格を持つことが義務付けられている点です。

この禁止事項によって、専門資格を持たない配信者は専門知識解説系のライブ配信を行うことができなくなりました。

また、禁止事項には政治的な内容も含まれています。

「中国共産党の指導力、社会主義制度、国の改革と開放を弱体化、あるいはゆがめるようなコンテンツの公開」「ディープフェイク技術を使って指導者の画像を改ざんする」「機密問題を意図的に誇大宣伝して世間の注目を集める」といった行為が明確に禁止されています。

また、中国商務省が発表した規定案では、「服装や印象が公共の秩序や道徳を乱すことがあってはならない」という項目に加えて、ライブ配信中は中国語を使うことも要求されています。

国家広播電視総局も「政治的立場が正しくなく、中国共産党と国家に反目する者」「低俗なインフルエンサー」の番組起用を禁止する通知を出しています。

違反した配信者に対する処罰は段階的かつ厳格なものです。

規定に違反した場合は、ネットの利用が制限されるだけでなくブラックリストにも登録されます。

そして、地方自治体が動画プラットフォームを定期的に監査し、違反した配信者の責任を追及します。

プラットフォーム側は、有害な配信者が別の名前で登録し直して戻ってきたり、別のプラットフォームに移行することができないようにする措置が求められています。

さらに、関連する業界団体には、配信者の評価システムを構築し、「法律やモラルに反する行為」をした配信者のリストを定期的に発表することが求められています。

中国芸能協会が隔年で更新しているリストには、「非国民的」あるいは「あまりにも低俗である」という理由でトップインフルエンサー数名が追加されており、リストに追加されたインフルエンサーはすぐに公の場から姿を消しているのが現状です。

このような厳格な規制によって、中国のライブコマース市場は政府の強いコントロール下に置かれていると言えます。

中国市場でインフルエンサーマーケティングやライブコマースを展開する際は、これらの登録義務と認可制度を十分に理解し、コンプライアンスを徹底する必要があります。

違反時の罰則・行政処分事例


〇トップライバーへの巨額脱税処分

2021年12月、ライブコマース界のトップインフルエンサーであった薇婭(viya)は、2019〜2020年の脱税を指摘されました。

脱税額は6億4300万元、過少申告6000万元が認定され、追徴課税、滞納金、罰金を併せて13億4100万元(約220億円)という桁違いの処分を受けました。

彼女の販売チャンネルは休止となり、ライブコマース界の象徴的存在が一夜にして消えることになった事例です。

同様に、雪梨という別のトップインフルエンサーも、同時期に脱税で摘発されました。

彼女が董事長を務める「宸帆」という会社は映画スターを含む70人のライバーを抱えていましたが、彼女の処分後は大きな打撃を受けています。

2021年末だけで、中国全体で1000人以上の有力ライバーが税務調査の対象となり、ライブコマース業界に激震が走りました。

〇ステルスマーケティング違反

インフルエンサーがブランドのために小紅書(RED)、抖音(TikTok)のライブコマースプラットフォーム上で「体験の共有」を発信したところ、「広告」と表示していなかった事案において、マーケティング会社が2万人民元の罰金処分を受けました。

また、wechatアカウントを通じて健康情報について発信を行う企業が、商品販売ボタンを設置していたにもかかわらず「広告」と表示していなかった事案も違法とされています。

2024年3月には、中国消費者網などが共同で「ライブコマースの消費者権益保護に関する世論分析報告(2023)」を発表し、有名配信者17人を名指しで苦情問題があることを公表しました。

この苦情は、商品の品質や誇大広告、アフターサービスの不備などが理由で、公的機関が個人名を挙げて警告するという極めて異例の措置でした。

規制環境の変化と対応戦略


中国ライブコマース市場は、急成長と規制強化が同時進行する独特な発展過程をたどっています。

2025年現在、ライブコマース市場は幻滅期を経て啓発期へと移行しており、企業に柔軟かつ戦略的な対応が求められています。

中国政府は、ライブコマースを就業促進や内需拡大に貢献する重要な経済手段として評価しており、広東省広州市や浙江省杭州市などの地方政府も発展支援政策を発表しています。

しかし、その一方で商品の品質低下や誇大広告が社会問題化しており、プラットフォームや当局による監督・規制が強化され、配信内容や商品情報のチェックが厳格化する流れが加速しました。

この背景には、トップKOLの不祥事や返品率の異常な高さが関係しています。

異常な返品率の事例も報告されており、中には売れば売るほど損をする状況が生まれました。

こうした問題に対処するため、2024年4月に「消費者権利保護法実施条例」が発表され、7月に施行されています。

企業が取るべき対応戦略としては、コンプライアンス体制の徹底がまず重要です。

ライブ配信前に専門家による表現チェックを受け、禁止商品や禁止表現を使用していないか確認することで法的リスクを回避できます。

トップインフルエンサーへの巨額脱税処分事例から、税務処理の適正化も必須とされています。

次に、トップKOLへの過剰依存からの脱却が必要でしょう。

トップKOLへの投資や相次ぐ不祥事のリスクを背景に、企業の間では特定の趣味や専門分野に精通し、フォロワーとのコミュニティ感が強い「ミドル・マイクロKOL」の活用に注目が集まっています。

ファッションやガジェット、カードゲームといったニッチな分野で、購買意欲の高い熱心なファンを持つKOLが存在感を増しているのです。

2025年以降は、規制・技術・消費者意識などの変化に柔軟に対応しつつ、オンラインとオフライン、KOLと自社発信、即時性と持続性といった多様な要素を戦略的に組み合わせていく必要があります。

ライブコマースは、単なる商品を売るための手段ではなく、ブランドを伝え、消費者との信頼関係を築く場として捉えることが、これからのライブ施策には求められているのです。

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