
監修者
株式会社篤月
陳 逸翔広告代理店を退職後、早稲田大学大学院入学&卒業。
累計100社以上の日本企業の中国SNSコンサルティング経験を持つ。
自身も5万以上のフォロワーを中国SNSでもつ、第一線のKOLである。
中国マーケティングの基本「私域流量」とは

中国マーケティングの基本である「私域流量(プライベートトラフィック)」とは、企業が自ら所有し、直接的かつ自由に、しかも無料で繰り返し接触できる顧客トラフィックのことを指します。
「私域流量」に対して、アリババやDouyinなどのプラットフォーム上のトラフィックは「公域流量(パブリックドメイン・トラフィック)」と呼ばれます。
公域流量がプラットフォームから借りている場所であるのに対し、「私域流量」は企業独自のデジタル資産になります。
具体的には、WeChatの公式アカウント、企業微信(WeCom)、WeChatグループ、ミニプログラム、自社CRMなどが「私域流量」に該当します。
中国のマーケティング市場では、単に広告を出して新規客を集める従来のモデルから、獲得した顧客をいかに自社の囲い込み圏内へ誘導し、信頼関係に基づいた密なコミュニケーションを取れるかどうかが、ビジネスの成否を分ける重要指標となっているため、「私域流量」が欠かせません。
なぜ今「私域流量」

中国で「私域流量」が重視されるようになった理由は、新規顧客獲得コストの激化のためです。
これまでの中国市場は、プラットフォームに広告費を投じれば、安価に大量のトラフィックを得られる傾向にありましたが、現在は市場の成熟と競争過多により、広告単価が高騰し続けています。
この「トラフィックの枯渇」という課題に対し、企業が生き残るための生存戦略として浮上したのが、一度接点を持った顧客を離さない「私域流量」の構築です。
特に、Z世代を中心とした現在の消費者は、一方的な広告よりも、信頼できるプロからの提案や、コミュニティ内での口コミを重視しています。
公域で種をまき、私域でじっくりと顧客を育成ナーチャリングするモデルは、今の中国市場ではもはや選択肢ではなく、高コストな中国市場で利益率を確保するための必須条件となっているのです。
参考記事:https://togetsu.co.jp/column/t-Hfj0O6
私域流量の最強ツールは?

「私域流量」を構築・運用する上で、最強と言われているインフラが「WeChat(微信)エコシステム」です。
経済産業省が発表した「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によれば、中国のB2C-EC市場規模は約3兆200億ドルという圧倒的な規模を誇っており、その中でもソーシャルコマースの存在感が極めて大きいことが指摘されています。
この巨大な市場において、「私域流量」の核となるのが企業微信(WeCom)です。
企業微信(WeCom)は、個人用WeChatとシームレスに繋がりながら、企業として顧客情報を管理できるツールで、「モバイル・ソーシャル環境の進展」を象徴する存在です。
企業微信(WeCom)を起点に、ミニプログラムでの決済や、WeChatグループでの双方向対話を実現することで、プラットフォームのアルゴリズムに翻弄されることなく、日本企業が自らの手で顧客との接点をコントロールすることが可能になります。
参考記事:https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240925001/20240925001-1.pdf
私域流量でLTV最大化

「私域流量」を活用する目的は、単なるリピート購入ではなく、顧客生涯価値(LTV)の最大化にあります。
「私域流量」の中では、顧客一人ひとりの購買履歴や行動ログを詳細に把握できるため、マスメディア向けの宣伝ではなく、個人の嗜好に合わせた、つまりは「超パーソナライズ化」された接客が可能になります。
ここでさらに重要な役割を果たすのが、現場の中国人スタッフの運用能力です。
現地スタッフはユーザーと同じ文化的背景を持ち、チャット上での絶妙な間合いや温度感のあるコミュニケーションを得意とします。
自動返信のBotでは表せない人間味のある対応によって、顧客はブランドの熱烈なファンへと変化していくのです。
ファンとなった顧客は、自ら新しい顧客を連れてくるアンバサダーとなり、結果として広告費に頼らない自走型の集客サイクルが完成します。
「私域流量」は、日系企業の質の高いサービスを中国市場で正当に評価させるための最強の武器となると言えるでしょう。
まとめ

今回は、中国のマーケティング市場で今注目されている「私域流量」について解説しました。
「私域流量」は直接アクセス可能な自社資産であり、広告費高騰への対抗策として必要不可欠になっています。
「私域流量」の活用には、WeChat(WeCom)を中心としたソーシャルインフラの活用が最も効率的とされています。
また、「私域流量」を通じてのちにファンとなる顧客と深い信頼関係を築くことは、LTVの最大化と低コストな顧客獲得サイクルを実現できます。
中国でビジネスを展開する日系企業は、公域流量で認知を広げつつ、優秀な中国人材のコミュニケーション能力を活かして私域流量を運用し、顧客を資産として育て上げる視点が求められています。


